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第213回 強く優しく

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「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」
この言葉はどこかで何度か目にしたり聞いたりしたことがあった。非常に印象的な言葉だ。有名な言葉であり、よく知られている。そして、とにかくかっこいい。ぼくも実は、強く、優しくなりたいと心から願っている。

それでこの言葉はどこから来たか調べてみた。この言葉の原点はフィリップ・マーロウのセリフである。フィリップ・マーロウ(Philip Marlowe)というのは実在した人物ではなく、レイモンド・チャンドラー(Raymond Chandler)の書いたハードボイルド小説シリーズの探偵である。このセリフは、シリーズ第7作にあたる『Playback』(1958年)に登場する。原文はこうだ。
"If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive."
1959年に刊行された早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ 清水俊二訳『プレイバック』ではこう訳されている。
「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」
「hard」を「しっかり」と訳しているのが、いま知ると意外であった。この言葉はのちに生島治郎が引用していて、『傷跡の街』のあとがきで、マーロウのセリフとしてこう書いている。
「タフじゃなくては生きていけない。やさしくなくては、生きている資格はない」
「hard」を「タフ」と、いわば意訳しているわけだ。だが、このほうが確かに印象的である。この生島治郎の訳が元になったのか、1978年の角川映画『野生の証明』のキャッチコピーとなったのがこの言葉。
「男はタフでなければ生きてはいけない。優しくなければ生きている資格がない」
この時は主語が「男」になっている。この映画の宣伝文句として、一気に日本中に広まったようである。

そして2016年 早川書房 村上春樹訳『プレイバック』ではこうだ。
「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」
キャッチーではないが原文に忠実に訳されている。しかし、「強くなければ」は思い違いだったのか。どこかで変わったのだろうか。ここまではわからなかった。言葉は少しずつ変わっていくけれど、とにかく強く、優しくなりたいものだ。


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by takeuchi-cl | 2017-07-31 09:00
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   タケウチマサトモ


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