たけうちこどもクリニック

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第221回 細い道

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子どもの頃によく通った細い道がある。家と家の隙間に入り込むように伸びる、舗装されていない細い道。子どもの頃はそんな道があちこちにあって、子ども同士でいつも通り抜けたものだが、今ではそんな道も少なくなった。その細い道もすでに形を変えていて、ほとんど通る人はいなくなった。ある時、ふと湧いた懐かしさと冒険心で、その道を探検するように通ってみた。暗くじめじめした細い細い道。そういえば、子どもの頃、雨の日に母親とこの道を歩いたのを思い出した。長靴で水たまりに入ってピチピチチャプチャプと唄いながら通ったことがあったように憶えている。今では地面にはブロックが敷き詰めてあった。体が大きくなったからか、あの頃よりもっと狭くなったように感じる。体すれすれにその道を通り抜けると、広く明るい当たり前の道に出た。とても短く細い道だった。


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by takeuchi-cl | 2017-09-25 09:00

第220回 直腸カルチノイド

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この夏、直腸にカルチノイドが見つかった。

あの日は、がん検診として大腸内視鏡検査を受けていた。「大丈夫ですね。あとは抜いていきますからね」と先生。検査はそろそろ終わろうとしていた時だった。カメラは、赤く入り組んだ迷宮のような私の腸内を引き抜かれていく。私は検査が終わることに安堵しながら、モニターを見つめていた。とそこに、ポッコリと盛り上がる塊が見えた。「ん?」と先生のカメラが止まる。カメラを戻し、様々な角度からその艶やかな塊を映し出す。あとで聞けば、サイズは5mmくらいの小さな腫瘤だという。表面は平滑で顔つきは穏やかそのものであった。自覚症状は全くなく、当然何もないはずのつもりで検査を受けていた私は、大いにショックを受けた。41歳にして、低悪性度とはいえ腫瘍が見つかったことに内心かなり狼狽したのである。2年前にも検査を受けた時にはなかったものだ。病理検査の結果、腫瘍はカルチノイドと判明し、検査をしてくださった先生からは手術を勧められた。

自分でもいくつか文献を集めて読んでみた。それらによると、カルチノイドは比較的低悪性度の神経内分泌腫瘍である。発生する臓器によって悪性度が異なる。日本を含むアジア諸国においては直腸カルチノイドが多い。直腸カルチノイドは発症年齢が低く、男性に多いと報告されている。治療の原則は腫瘍の完全切除であり、転移の有無が治療方針に大きく関係する。ということだ。文献に掲載されている手術例の写真は、腫瘍は大きくて潰瘍ができており、かなり悪い顔つきをしていた。私のは、まだまだかわいいものである。今回の私の場合は腫瘍径が小さいため、内視鏡的切除の適応である。こうして、私は人生で初めて手術を受けることになった。

手術といっても内視鏡手術で、当日の朝も普通にご飯を食べ、排便もして病院に向かった。事前に便が出ていたので、浣腸もなしにそのまま手術を受ける運びとなる。麻酔はどうするのかと思っていたが、なんと麻酔はしないとのこと。実際、直腸の粘膜を切っても痛くないのは不思議だった。台に横臥し膝を抱えるように曲げる。手術の一部始終を画面を見ながら受けるので、とてもよくわかった。お尻から内視鏡が入る。腫瘍周辺の粘膜下に生理食塩水だろうか、液を注射すると、一気にプゥーッと膨隆した。2回ほど注射をした後、リングを腫瘍にかける。うまいもので、リングをかけられた途端、それまで大きく盛り上がっていた我がカルチノイドは、首を絞められたように小さくしぼんでしまった。そこに電極のワイヤーのようなものをかけ、そのリングの下を電気的に焼灼すると、あっという間に腫瘍は切除せしめられた。腫瘍の切除された痕は焼けて禿げたようになっている。ここをつまむようにクリップのようなものをいくつもかけていく。上手いものだと感心してみている。痛みはほとんどない。時間にして20分ほどだろうか。思っていたよりも早く、手術は終了した。

そのあとは安静にしているとやがてお腹が動き出した。優しい看護師さんがバナナとプリンを持ってきてくれたのでありがたくいただく。こんな時は優しさが身にしみる。お昼も消化のいいものなら食べてもよいということで、近くの店でパスタを食べた。術後は入院して様子をみるということになっており、それから一日病室でおとなしく過ごした。驚いたことに部屋は広い個室で、バストイレ付きであった。オスカー・ピーターソンの明快なピアノジャズを聴いたり、持っていった『大いなる眠り』を読んだり、映画『サンダーボール作戦』を観て、ひとり過ごす。ゆっくりしたが、やはりというか、夜はなかなか寝られなかった。病院の夕食と翌朝の朝食は、お粥であった。先生から、くれぐれもお酒はしばらく控えるよう言われた(血流がよくなって切除した痕から出血することがあるそうだ)ので、退院後もしばらくお酒はがまんした。出血も痛みもなく体調はいいようで、筋トレやランニングも再開している。

自分も癌になった。これは大きな発見だった。今回はたまたま検診を受けて見つかったものだから、まだ腫瘍も小さいうちに、内視鏡手術で1泊入院で済んだから、運がよかったんだろう。そう思う。これからもこまめに検診を受けていくことにしようと改めて思うのである。



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by takeuchi-cl | 2017-09-18 09:00

第219回 10分間の音読

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前に英字新聞を読むことを始めた(第198回)のだが、Kindleで英書を読むほうはなかなか進まなかった。それは、一冊の本となると文章が長すぎて、読み続けることができなかったからだ。

そこで10分間の音読をすることにした。たった10分なら、忙しくても時間を確保しやすい。それに、取りかかるのが億劫で、今日は疲れているからとか、面倒だからといったやらない言い訳が浮かんでも、たった10分だけでいいと思えば取り掛かりやすい。いつやるか時間を決めてリマインダーをセットしておくと、やろうという気になれる。そして一旦読み始めてみれば、つい10分で終わらず、もう少し読み続けたくなるのが常だ。こういったことは、取りかかるまでが一番ハードルが高いのである。

また、音読するのがもう一つのポイントで、英語を話す練習のつもりで、声に出して読むことに主眼を置いている。だからなるべく自然な英語らしい速度と発音での音読を目指す。実際に声に出して読んでみると、つっかえてしまって自然な速度で読むのは意外と難しい。目で英単語の群れを追いつつ、声に出して読んでいく。単語の連なりによる音の変化や区切りや抑揚に気をつけながら。読み方はAudibleで聴くナレーションをお手本にしている。なるべく真似しようとするみたいに。まだ登場人物によって声色を使い分けるようなことはできないのであるが。その時に読み方がわからなくても、なんとなくこうかなという感じでとりあえず読んでしまう。当然知らない単語が出てくるが、辞書は引かないことにしている。とにかく止まらずに読み流すようにする。

それから、人前で英語を声に出して読むというのは少し気恥ずかしいので、自宅でやるようにしている。家族の前なら少し平気だし、続けているうちに、「またやってる」くらいに当たり前になる。ちなみに今読んでいるのは、第213回でも触れたRaymond Chandlerのシリーズ第1作『The Big Sleep』、日本語訳は村上春樹の『大いなる眠り』である。翻訳も所々に村上春樹らしい表現があって面白い。


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by takeuchi-cl | 2017-09-11 09:00

第218回 9月ラン


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8月は暑くて走るのをやめ、代わりに水泳をした。だからこの日、久しぶりのロングランだ。新調したウェアに着替え、バックパックを背負って靴紐を結んだ。外は意外に涼しい。夏が過ぎつつあるのを感じながら、街中を駆け抜ける。途中、コンビニでドリンクを補給し、川を渡り、川沿いを走る。生い茂った雑草がはみ出した歩道を駆ける。百日紅がピンクの花を咲かせている。田んぼには頭を垂れ始めた稲穂が並ぶ。空は雲がたなびき、広々と広がっている。
走るにつれて次第に暑くなってくる。汗がジワジワと体から滲み出ていく。ドライウェアのおかげか、体は快適に保たれているのを感じる。サングラスをかけたり外したりしながら走る。水分補給に気を遣い、時々道を確かめる。歩道のない道では車に気を遣う。そこを過ぎれば目的地だ。歩道の真ん中に、トカゲがギラギラした腹を空に向けて死んでいたのに驚いて、ちょっと飛び上がってしまう。ちょっとカッコ悪かった…見られなかっただろうか。気を取り直してグルッと一回り。休むことなく続いて復路へ。
次第に強い日差しが照付けてうんざりしてくる。足取りが重くなる。少しくらくらする。気づくと喉が渇いてくる。行きよりも、帰りが辛いのは世の常。人の少ない郊外から街中に入ると、そこらじゅうが人で溢れてる。ラーメン屋さんに並ぶ人の列。連れ立って自転車を漕ぐ少年たち。オープンしたばかりのイオンの前は多くの人で賑わっていた。何度かドリンクを補給しながら、終盤は失速。それでもやっとのことで家まで帰り着いた。距離は22km。汗を吸い込んだウェアを脱いで洗濯機を回し、シャワーを浴びる。走り終わった後の達成感がいい。


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by takeuchi-cl | 2017-09-04 09:00
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   タケウチマサトモ


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